フィンランド








いちどもフィンランドへは行ったことがないのですが。
不思議なことに、フィンランドという国にはとても親近感を覚えます。

仕事でフィンランド大使館を何回も訪れたことがあります。
ご縁があり、フィンランド観光局の東京オフィスから仕事する機会をいただきました。
フィンランドという国のプロモーションだったり、ラハティという都市の代表の通訳だったり。北欧を代表するフィンランド人デザイナーがメディア取材を受けたときに通訳を務めさせていただいたこともあります。おもしろい仕事でした。最近、フィンランド観光局が積極的にいろいろなところに広告を出しているのを目にします。日本人にとって、おいしい魚料理が豊富で、深い森と透明な水をたたえた湖が多くて、国民性も素朴で温かいフィンランドは、最高の観光destinationに間違いありません。

ところで、大使館というのは一歩足を踏み入れた途端に「日本ではなくなる」特殊な場所です。
カナダ大使館でも仕事をさせていただいたことが何回かありますが、フィンランド大使館のほうがより「外国へ行った感」が強烈でした。

なぜならば、「ちょっとあっちで待っていてください」と言われて入らせてもらった書斎からして、すでに完全に異国の香りだったからです。ぐるっと取り囲む書棚にはフィンランド語と英語の書籍の背表紙が並び、紙と木とインクとかすかな香水のような良い香りがしましたが、それは東京にいて東京ではない外国のものでした。腰を下ろした椅子も当然のことながらフィンランド製で、深く座ると小柄な私では足が床につかなくなりました。それが標準サイズの家具と、あとで聞きました。

童話で森の中でクマの親子が住む家に足を踏み入れた女の子の話を思い出しました。おとうさんグマの椅子やベッドだと足が床につかなくて、ぴったりだったのが子どもグマの椅子とベッドだった、というくだりです。

当然のことながら、フィンランド人は概して長身で体格が良い方が多いのですが、女性には華奢な感じの方もいました。女性といえば、フィンランド社会では女性がとてものびのびと活躍しています。日本も昔に比べれば、と思うかもしれませんが、私が知る限り、女性が官公庁や地方のお役所のようなところでも「長」のつく肩書きを持つと珍しがられるし、いろんな意味で日本は残念ながらまだ発展途上です。フィンランドでは(ヨーロッパのほかの国も同様かもしれませんが)、部長・長官といった役職に就く女性はごくふつうのようでした。ラハティ市の観光担当の部長は当時の在日大使夫人と同級生だったという女性で、ちなみにアシスタントとして同行していたのも若い女性でした。フィンランドで仕事をバリバリこなす女性たちは、たいてい鮮やかな色のスーツを着こなし、ショートカットもしくは長い髪をアップにして小さくまとめていました。仕事ができる女性に日本でよく見かける「意味なく伸ばした髪をバサバサさせている」タイプは皆無でした。

それでいて優しくてソフトな感じで、「仕事できます感」ギラつかせることもない。さらにアクセサリーは「引き算」のお手本でした。鮮やかなブルーのスーツを着て、小さなダイヤモンドのピアス以外のアクセサリーはつけない。香水臭くない(ここのところがいわゆるアメリカのキャリアガールたちより好感度高し♪)。一緒に仕事させていただいたフィンランド女性はチャーミングで、姿勢が良くて、本当に素敵でした。

代官山のカフェでのイベントでは、大使のスピーチを通訳させていただく光栄にも浴しました。カジュアルなイベントだったので、大使はダークグレーのマオスーツをお召しでした(とてもよく覚えています)。

イベントの目玉はフィンランド人の女性詩人の登場でしたが、事前に大使がこっそり「おしゃべりで有名だから苦労するかもしれないよ」と耳打ちしてくださいました。本番になると、案の定ベラベラとマシンガンのようにしゃべる方で、通訳として懸命にメモしながらもいささか途方に暮れました。目を上げたとき、大使がニヤッと笑っていたずらっぽくウインクするんです。
「ほらね、言ったとおりだろ?」
「はい、参ってます」
一瞬、大使と目で会話したのも、今は良い思い出です。

いつかフィンランドへはぜったい行かなくちゃ!おばあさんになる前に(笑)いや、おばあさんにとっても居心地よさそうな国です。


玲子のカルペディエム

カルペディエム Carpe Diemは「今を生きよ」という意味のラテン語です。毎年、誕生日に外国のお友だちがこの言葉を贈ってくれて気にいりました。今は富士山の麓でミニチュアダックスのみんみんと暮らしていますが、40年ほど暮らした東京からのいわゆるUターン組です。通訳や翻訳(英語)を生業とし、今は地元のがん専門病院で医療スタッフの英語のお手伝いをしてます。ジャズ、ブラジル音楽、歌舞伎が好きです。

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