続 めんどくさい女


六本木のミッドタウンの庭。ここの上の方に住んでいた親戚がいました。



母の葬儀の翌日の夜9時半ごろ、お風呂に入っていると携帯が鳴ってるのが聞こえました。放っておいても鳴り止まないので、バスタオルを巻いて応答すると、東京都内に住む叔母でした。入浴中だと伝えるとちょっと笑い、翌朝かけなおすが何時頃がいいかと尋ねてきました。10時ではどうかと言うと、都合が悪いから9時にしてくれと言いました。そんなら最初から何時頃がいいかなんてきかなきゃいいのに、と思いつつ、挨拶だけして電話を切りました。

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もしもし、玲子さん?お葬式には行けなくて、本当にごめんなさいね。大変だったわね。
主人がね、もう歩けないの。すっかり弱っちゃってね。ほら、ご存知の通り、もともと糖尿でしょ。いえね、まだ車椅子じゃないの。歩行器を使ってましてね。その歩行器というのがね・・・。

(歩行器の説明が延々つづいたので省略)

そういうわけでね、家を出られないのよ。2時間ぐらいなら出られるんだけど、御殿場って新幹線の駅がないでしょう?2時間以内に御殿場まで行って帰って来るのは無理。それでね、失礼してしまったわ。本当にごめんなさいね。
あいにく息子夫婦も外国行ってたりしてね。失礼してしまって、本当にごめんなさい。
最近はねえ、息子に会うのも週1回ぐらいなの。2世帯住宅といっても、ほら、うちは入り口が別々になってるし。
もうあの子たち家族が何をやってるのかなんて、全くわからなくて。ほとんど会話なんてないんですのよ。
ほんと、冷たいものよ。父親がこんなに弱ってるっていうのに、心配じゃないのかしらね。
それにね、息子の嫁もほら、仕事してるでしょ?だから・・・・。

(息子と嫁の忙しさ具合について延々とつづいたので省略)

ええ、本当にね、ごめんなさいね。お母様のお葬式にも出られなかったなんて、本当に残念だったわ。
息子に相談できたのもね、やっと昨夜のことなのよ。それで何とかクリスマスの頃の週末にそっちへ行ってもらえないかと頼んでおいたから。それでね、息子が週末にお邪魔させていただきますので、よろしくお願いします。
あら、ごめんなさいね、お忙しいのに。お時間あまりないんだったわね。

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忙しくて時間ないのはそっちでしょ?
こっちの週末の都合を尋ねられることもなく、ほとんど一言も差しはさむこともできないまま、叔母は一気に言いたいことだけ言って電話を切りました。
叔母といとこ夫婦の名で出した生花代は私が立て替えたのですが、御礼の言葉もありませんでした。

だいたい葬式のときぐらいしか顔を合わさなくなるものですが、やっぱり親戚ってめんどくさいです。





玲子のカルペディエム

カルペディエム Carpe Diemは「今を生きよ」という意味のラテン語です。毎年、誕生日に外国のお友だちがこの言葉を贈ってくれて気にいりました。今は富士山の麓でミニチュアダックスのみんみんと暮らしていますが、40年ほど暮らした東京からのいわゆるUターン組です。通訳や翻訳(英語)を生業とし、今は地元のがん専門病院で医療スタッフの英語のお手伝いをしてます。ジャズ、ブラジル音楽、歌舞伎が好きです。

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