ブサイクなことはしない

お茶を習っています。裏千家です。はじめてから2年ちょっと。まだまだ駆け出しです。

これは本物の楽茶碗です。つまり、京都の楽家のあるじの手による茶碗です。楽家の祖、長次郎は元は瓦職人でした。利休と出会い、こまごまとした指示と刺激とを受け、端正な茶碗を生み出すに至りました。今でも長次郎の時代と同じやり方で茶碗を作っておられる京都の楽家を訪ねられたことは、自分としても大きな収穫でした。利休の美学は、日本独特の感性を最高のレベルに洗練させたものだったと思います。単なる「一椀の茶をたてる」という行為だけでも深淵なのですが、それだけにとどまらず、絵画、建築、作庭、陶芸など、幅広い分野に影響を与えました。 


外国語でメシを食ってきた人生ですので、当然、何十年も外国のことに関わってきました。外国にも行って、暮らした。外国人の友人もたくさんできた。音楽や映画を含む外国の文化を、浴びるほど吸収してきた。 ところが、年を経て、今願うことは「ちゃんとした日本人として生きたい」ということだけです。 では、「ちゃんとした日本人」ってどういうことだろうか。 


歌舞伎を観る。なぜこんなに美しいんだろう、と考える。所作。姿勢。体の使いかた。ピンと張った指先。実は、お茶も同じなんです。茶室に入るときの足の運びかたは、お能や歌舞伎と同じ。肘の張りかたは、武道の構え。指先の揃えかたも、日本舞踊、歌舞伎やお能と同じ。つまりは、日本の伝統文化の基本の姿勢です。

所作のような「型」を支えているのは深い精神性です。利休が提唱した価値観を「冷凍枯淡」と呼ぶそうです。冷え冷えして凍る、枯れる、褪せて淡い。

そういう価値観を理解できる人間になりたい。残りの人生をかけて、まともな日本人になりたい。精神性を理解できるまでには遠い道のりなので、まずは型から。 型をきちんとさせるために、日頃から何をするにしても、ブサイクなことをしてはいけないのです。 人との関係も、仕事も、何をするにも、まずはきれいに。きちんと。


玲子のカルペディエム

カルペディエム Carpe Diemは「今を生きよ」という意味のラテン語です。毎年、誕生日に外国のお友だちがこの言葉を贈ってくれて気にいりました。今は富士山の麓でミニチュアダックスのみんみんと暮らしていますが、40年ほど暮らした東京からのいわゆるUターン組です。通訳や翻訳(英語)を生業とし、今は地元のがん専門病院で医療スタッフの英語のお手伝いをしてます。ジャズ、ブラジル音楽、歌舞伎が好きです。

0コメント

  • 1000 / 1000